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ピラーアレーンを基にした分子空間材料

分子を並べる

 私たちは、ピラー[n]アレーンの優れた対称性を利用し、1、2及び3次元にピラー[n]アレーンを並べることで分子空間を有した材料を造り出しました。正多角柱分子は、柱構造から1次元チャンネル構造を形成することができます。さらに2次元に正6角柱分子を敷き詰めると、蜂の巣構造である2次元ハニカムシート構造を形成することができました。一方で、正5角柱分子を敷き詰めても、正6角柱分子のような2次元シート構造を作ることは困難です。また正6角柱分子のみでは3次元の球状構造を形成することはできませんが、あえて対称性の低い正5角柱分子を組み込むことにより、3次元の球状構造を形成することができました。フラーレンが正5角形と正6角形から球状構造になるのと同様の原理です。


分子を分ける

 各種の分離精製法や分子認識の技術が発展した現在も、アルカン異性体の分離はなお難しい課題です。蒸留などの技術では分離が困難なのはもちろんですが、アルカンは他の分子との相互作用が弱いため、これを精度よく分離する方法はほとんど知られていません。しかしアルカンの分離には大きなニーズがあります。例えばイソオクタンのような枝分かれの多いアルカン含有の高いガソリンは、エンジンのノッキングの少ない、いわゆるハイオクガソリンとなることが知られています。我々は正6角柱ピラー[6]アレーンからなる空間材料が、その空間に分岐状アルカンを選択的に取り込むことを見出しました。この特徴を利用し、ピラー[6]アレーンからなる空間材料を直鎖と分岐アルカン混合物に作用させると、空間材料は分岐アルカンを選択的に取り込み、結果として大幅にガソリンの品質を向上させることに成功しました。容易にガソリンを高品質化することができ、エネルギー・環境問題解決への貢献が期待されます。様々な分子量を有する高分子から高分子量体を選択的に分離することにも成功しています。

分子を検知する

 ピラー[n]アレーンの優れたアルカン形状認識能と分子構造をデザインすることで、アルカンガスの形状を色変化で検知することができました。直鎖・分岐・環状など様々な形状の混合アルカンガスの中に、どのような形のアルカンガスが存在しているかを色変化により検知することができ、ガソリンの純度を見分けるセンサーとしての応用展開が期待されます。