ピラー[n]アレーンを基にした分子空間化学
分子空間を作る
ピラー[n]アレーンは柱状であることから、ピラー[n]アレーン上下での連結により一次元チューブを得ることが可能です。そのため片面のみに安息香酸を導入したピラー[5]アレーンが、安息香酸同士の多点での分子間水素結合により、ピラー[5]アレーンの面と面を向かい合わせにしたチューブ状ダイマーを形成することを見出しました。またLayer-by-Layer法を用い、基板表面にピラー[n]アレーンを積層させ、チューブ長を制御したナノチューブの合成に成功しました。 ピラー[6]アレーンは正六角形構造であることから、集積化によりヘキサゴナルな二次元シートを得ることができます。その二次元シートに正五角形のピラー[5]アレーンを組み込むことで曲面を生み出すことが可能となり、フラーレン様のベシクル集合体を構築することができました。また側鎖にトリエチレンオキシド鎖を導入したピラー[5]アレーンは、導入したトリエチレンオキシドが液体のため、環状骨格を有する室温液体です。そのため、このバルク液体にゲスト分子を溶かし込んだ場合は、競合する溶媒が存在せず、その結果、ゲストが高効率で取り込まれ、高効率なインターロック分子の合成及びドナー性の環状骨格に発光性のアクセプターゲストが近接することによる特異な発光挙動を示しました。
分子空間を使う
ピラー[n]アレーンは、上下面のアルコキシ基を足場として様々な官能基を導入することができます。それを基に様々な機能空間材料の創成が可能です。例えば発光性アクセプター分子を組み込んだピラー[n]アレーンは、励起状態での構造緩和により、エキサイプレックス発光を示し、空間へのゲスト取り込みによりエキサイプレックス発光が阻害され、局所励起発光を示すことが見出され、発光材料としての展開が期待されます。また、適切な長さのアルキル鎖やフルオロアルキル鎖を導入した場合は、ゲスト蒸気の空間への取り込みにより、液体/固体、アモルファス/結晶構造転移を示す刺激応答性材料を得ることができました。ピラー[n]アレーン結晶を用いることで、結晶内空間への高分子量ポリマーの選択的包接や、高分子を空間に貫通させた後に、高分子末端を封鎖することで、環を空間的に閉じ込めたインターロック構造の形成により、形状を記憶する温度応答性材料を得ることができました。