研究内容

"From Physical Organic Chemistry To Functional Materials"

 

物理有機化学に基づいた動作原理を基礎にして、有機合成の手法を駆使して分子を合成し、新規な光・磁気・電気の複合機能を有する有機機能性材料を開発する研究を行っています。有機分子は、「分子設計」という手法でその機能を設計することが出来ます。機能をもった分子は「分子エレクトロニクス」といわれる分野で活躍することが期待されています。研究室では設計から物性測定までをカバーする幅広い研究を行っています。

以下にその主なものを挙げます。

1.フォトクロミック分子と金属微粒子を用いたネットワーク

フォトクロミック分子は光照射により色だけでなく、分子の幾何構造、電子構造が可逆にスイッチされます。この光スイッチ分子を、分子一つ一つが電子回路の部品として振舞う分子エレクトロニクスに展開することを目的にします。そのためには新規スイッチ分子の合成と測定技術開発が不可欠です。最終的には、将来「分子コンピュータ」と呼ばれるものの基礎となる、情報処理システムの構築を目指します。

2.超分子組織体における光・熱応答挙動

両親媒性側鎖と疎水性のコアからなる分子では、極性溶媒中で疎溶媒性相互作用が働くことが知られています。疎溶媒性相互作用で組織化された超分子組織体の光・熱応答挙動は、新しい切り口の機能性材料として期待されています。

3.2次元表面での機能性分子の配列

グラファイトなどの基板上に組織化された2次元結晶と呼ばれる集合体を、プローブ顕微鏡を用いて研究を行っています。一つ一つの分子が識別できるこの手法を用いて、新しい機能性材料の開発に取り組んでいます。

4.分子エレクトロニクスを見据えた分子磁性

ジアリールエテンの両端にラジカルを置換基として入れると、フォトクロミズムによってπ共役系が変化し、開環体場合は相互作用が弱い(disjoint型)のに対して、閉環体の場合は相互作用が強い(閉殻構造との共鳴)ことを見出しました。この原理を出発点にして、様々なスイッチング作用を持つ分子を合成し、機能評価を行っています。