Research

有機合成化学の新しい潮流を目指して

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私たちの研究室ではフラスコに代わる新たな反応器であるフローマイクロリアクターを利用した分子変換法の開発と、それによる新規材料の開発を行っています。

フローマイクロ合成

有機合成化学はこれまで、社会の様々な物質を合成し提供してきました。テクノロジーの発達により社会の要求が高度になった現在、それを満たす高機能化された物質の合成には新たな分子変換法が必要です。
しかし、有機合成では100年以上昔から変わらず、ガラスフラスコに代表されるバッチ型の反応器が用いられています。バッチ型の反応器ではミクロな分子変換反応という視点に加えマクロな「反応系全体」の制御も必要であり、時としてその制御は複雑で困難です。この100年で膨大な数の化学反応が開発されてきましたが、その一方で反応器はその多くが旧来のものが使用されています。バッチ型反応器では化学反応の力を必ずしも全て発揮できているわけではなく、つまり新しい反応の開発に加え、新しい反応場の研究が必要となります。

私たちはマクロなバッチ型反応器に代わる反応器としてフローマイクロリアクターに着目し、これを利用した分子変換法の開発を行っています。フローマイクロリアクターとはマイクロメートルサイズの流路を持ったフロー型の反応器で、流路内に溶液を流して反応を行います。そのためフローマイクロリアクターには以下に記す3つの大きな利点があります。

  • 高速混合
    物質の拡散時間は拡散距離の2乗に比例します。一般的なフラスコ内における磁器撹拌子の回転半径が数cm程度であるのに対し、フローマイクロリアクターの経路直系はマイクロメートルサイズです。つまり拡散距離が極めて短いため、混合速度も桁違いに速くなります。
  • 精密な反応時間制御
    フロー合成では流路内を流れる溶液の速さ(流速)と流路の体積を調節することで、溶液が流路内を通過する時間(滞留時間)を制御することができます。特にフローマイクロリアクターは内部が微細構造ですのでミリ秒単位という、人間の手で試薬を加える手法では達成できない時間軸での実験操作が可能です。
  • 精密な温度制御
    一般に、体積は長さの3乗に比例するのに対し、表面積は長さの2乗に比例します。例えば長さが10分の1になれば表面積は100分の1、体積は1000分の1となるので、この時、比表面積(単位体積当たりの表面積)は10倍となります。つまり微小流路を持ったフローマイクロリアクターは非常に大きな比表面積を持った反応器であると言えます。有機反応において水浴や湯浴による熱移動は反応器の接触表面を通じて行われますので、大きな比表面積によって精密な温度制御や急速な加熱冷却が可能となります。

私たちはこれらの特長を利用し、化学反応本来の力を発揮した新たな分子変換法の開発と、それを用いた新規材料の開発を行っています。


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