論文紹介アーカイブ

2006年

Yoshida, T. et al. Nat. Chem. Biol. (2006). 2, 596-607

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TRPチャネルは様々な細胞刺激に対するセンサーとして機能する。本研究によって、システインS -ニトロシル化を介した新規TRPチャネル活性化機構を発見した。一般的にTRPCファミリーは受容体活性化型チャネル、TRPVファミリーは温度感受性チャネルとして分類されている。しかし、これらの分類を超えてTRPC1, TRPC4, TRPC5, TRPV1, TRPV3そしてTRPV4が一酸化窒素(NO)に応答し細胞内にCa2+を流入させることがわかった。つまり、従来の分類を超えたNOセンサーという新たな機能的カテゴリーが確立されたことになる。システイン変異体を用いたラベリング実験及びCa2+濃度測定により、TRPC5チャネルのポア領域に存在するCys553, Cys558がNOやシステイン選択的酸化剤によって細胞の内側から修飾されて活性化することが明らかになった。また、このシステイン残基はNO感受性である他のTRPチャネルにおいても同じポア領域に保存されていた。注目すべきことに、ウシ大動脈内皮細胞においてTRPC5が受容体刺激によるCa2+流入を引き起こすことにより、内皮型NOS(eNOS)を活性化していること、また産出されたNOによりTRPC5が酸化を受け活性化が引き起こされる、正の制御機構が存在することが強く示唆された。今まで、NO産生を引き起こすCa2+チャネルとそれがNO産生にどのように作用するのか未解明であったので、今回その点が世界で初めて解明されたことになる。

Erxleben, C. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006). 103, 3932-3937

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Ca2+チャネルは1ミリ秒以上空いたままになることは滅多になく、このおかげで細胞内のCa2+濃度が毒性のあるレベルまで上昇する事はない。しかし、DHP感受性のCa2+チャネルであるCav1 familyは、他に類をみないmode2といわれるgating modeをもち、このmode2は頻繁に非常に長いopeningが見られる。本研究に於いては、Cyclosporinの神経毒症状、及びTimothy症候群といった、ヒトの二つの症状において、Cav1.2のmode2 gatingの割合が増える事を組換え発現系を用いて示した。これらの症状に於いて、mode 2 gating は、それぞれ別々のSer残基 (それぞれTimothy syndrome: Ser-439, cyclosporin: Ser-1517) によって起こっており、何れのSer残基もtype II calmodulin-dependent protein kinaseに対するコンセンサス配列である。薬理学的にtype II calmodulin-dependent protein kinaseを阻害した場合、およびターゲットであるSer残基をAlaに置換した場合 mode2 gatingは増えた。我々はこの事から、chronic cyclosporinの適用、及びTimothy症候群によって起こる興奮毒性にSer残基のリン酸化異常が関わっていると考えられる。

Togashi, K. et al. EMBO J. (2006). 25, 1804-15

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哺乳動物における温度感受性TRPチャネルは8種類あり、おそらく他にも温度感受性を持つTRPチャネルはある。我々は、TRPM2も35℃以上の温度で活性化されうる事を明らかにした。cADPR (cyclic ADP-ribose)は25℃ではTRPM2を活性化しないが、35℃以上の熱と供に適用すると劇的な活性化を引き起こす。熱とcADPRに対する同様な応答は、TRPM2を内在的に発現しているラットの膵島細胞腫RIN-5でもみられ、この応答はTRPM2のsiRNAによって顕著に減弱した。これらの事から、体温下ではTRPM2はcADPR関連物質によって活性化し、カルシウム流入を制御することが示唆された。

Kang, M.G. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006). 103, 5561-5566

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カルシウムチャネルはシナプス伝達の制御に決定的な役割を演じる。シナプス前膜での伝達物質放出に関する電位依存性カルシウムチャネルの機能がよく知られている一方で、シナプス後膜におけるカルシウムチャネルの機能に関してはまだ、研究が始まったばかりである。我々はAMPA受容体と神経系のカルシウムチャネルの機能的結合について研究を行った。一連の生化学実験によって、シナプス後膜でAMPA受容体と電位依存性カルシウムチャネルであるCav2.1(a1A)及びCav2.2(a1B)が特異的に結合していることを明らかとした。また、電気生理学実験と、細胞内カルシウム濃度イメージングによって、組換え発現系におけるAMPA受容体とCav2.1が機能的に共役している事が明らかになった。シナプス後終末のカルシウム濃度上昇やAMPA受容体の膜への輸送が、シナプス可塑性において決定的な重要性を持つ事を考慮すると、電位依存性カルシウムチャネルとAMPA受容体の機能共役はシナプス可塑性のメカニズム解明に新しい見識を与えると考えられる。

Kang, M.G. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006). 103, 5561-5566

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カルシウムチャネルはシナプス伝達の制御に決定的な役割を演じる。シナプス前膜での伝達物質放出に関する電位依存性カルシウムチャネルの機能がよく知られている一方で、シナプス後膜におけるカルシウムチャネルの機能に関してはまだ、研究が始まったばかりである。我々はAMPA受容体と神経系のカルシウムチャネルの機能的結合について研究を行った。一連の生化学実験によって、シナプス後膜でAMPA受容体と電位依存性カルシウムチャネルであるCav2.1(a1A)及びCav2.2(a1B)が特異的に結合していることを明らかとした。また、電気生理学実験と、細胞内カルシウム濃度イメージングによって、組換え発現系におけるAMPA受容体とCav2.1が機能的に共役している事が明らかになった。シナプス後終末のカルシウム濃度上昇やAMPA受容体の膜への輸送が、シナプス可塑性において決定的な重要性を持つ事を考慮すると、電位依存性カルシウムチャネルとAMPA受容体の機能共役はシナプス可塑性のメカニズム解明に新しい見識を与えると考えられる。