論文紹介アーカイブ

2004年

Suzuki, T. et al. Nat.genet. (2004). 36, 842-849

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てんかんは神経細胞の活性制御異常により、痙攣、強直発作、失神発作を主症状とする中枢神経系疾患である。その発症機構の一つとして、カルシウムチャネル群の活性化異常が提唱されてきたが、その分子メカニズムは不明であった。我々は若年性てんかん原因遺伝子として6p11-p12遺伝子座よりEFHC1の単離に成功した。EFHC1は電位依存性R型カルシウムチャネルC末端に結合するタンパク質であり、R型カルシウム電流増強を惹起するが、てんかん家系に見られるEFHC1点変異体では、R型カルシウムチャネルに対する電流増強効果が消失することを明らかにした。さらにEFHC1一過的発現神経細胞において野生型EFHC1は神経細胞死を誘導するのに対し、点変異体では細胞死が抑制された。以上、EFHC1点変異に伴うR型カルシウムチャネル制御機構異常により不必要な神経細胞を選別する機構が損なわれ、てんかん症状へ至るという新たな発症機構解明に成功した。

Sugimoto, K. et al. Chem. Biol. (2004). 11, 475-485

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イノシトール3リン酸 (IP3) は、受容体シグナルを細胞内Ca2+シグナルへと変換するセカンドメッセンジャーである。本研究では、このIP3を選択的に検出する蛍光性バイオセンサー (JACS 2002) を改良し、生細胞内への取り込み効率を高めることに成功した。そして各種細胞 (CHO, DT40) に生理的刺激を与え、リアルタイムでIP3動態がどのように変化するかを解析した。それによりCa2+依存的なIP3産生の存在およびその正確な経時変化が明らかになった。この蛍光性プローブは、phospholipase C d のPHドメインのIP3結合部位特異的に蛍光性物質をターゲットさせるというstrategyをとっている。この方法を応用することで、細胞内の他の二次メッセンジャーに対する蛍光性バイオセンサーの開発が可能になり、細胞内での二次メッセンジャーのネットワークの解明において強力なtoolとなりうる。