イノシトールリン脂質代謝回転に連関した受容体の刺激により活性化される、TRPチャネルの新規マウスホモログTRP7(TRPC7に統一)を単離した。広範な組織分布を示すTRP7は高い構成的活性を示し、PKCとは独立にジアシルグリセロールロールによって正制御される、細胞内Ca2+作動性Ca2+透過カチオンチャネルであることが明らかになった。本TRP7は血管平滑筋などにおいて見られるbackground電流にも関与することが考えられた。
神経細胞標本にみられるN型電位依存性Ca2+チャネルの機能的多様性における、副サブユニットα2とβ1の寄与を明らかにした。α2とβ1ともに不活性加速度等、巨視的性質のみならず、単一チャネルの開閉パターンを制御することから、α2とβ1がN型チャネルのゲートの一部を形成することが明らかになった。また、α2は主サブユニットα1Bを活性開口可能なCa2+チャネルに変換させることを明らかにした。
tottering及びleaner行動異常マウスのP型Ca2+チャネルα1A遺伝子の変異がどのようにP型チャネルの機能異常を引き起こすかを検討した。 tottering及びleanerマウスから単離した小脳プルキンエ細胞における変異P型Ca2+チャネル及び組み換え発現系におけるそれの機能的変化の一致から、 P型Ca2+チャネルの直接の機能異常が、より高次の神経機能の異常を引き起こすことが明らかになった。
ミュータントマウスstargazer(stg)において、運動失調・欠神発作等、行動異常の原因遺伝子が、電位依存性チャネルCa2+副サブユニット?の神経型isoform γ2をコードすることをみいだした。
神経細胞におけるシナプス前抑制を惹起する、GTP結合蛋白質(G蛋白質)による電位依存性Ca2+チャネルの抑制の分子的機序を明らかにした。 G蛋白質αサブユニットとβγサブユニットそれぞれがN及びP型Ca2+チャネルの別々の領域に結合することが明らかになった。
イノシトールリン脂質代謝回転に連関した受容体の刺激により活性化される、受容体活性化Ca2+チャネルの分子的実体であるTRP蛋白質の新しいマウスホモログTRP5(後にTRPC5に統一)を単離した。脳のみに発現するTRP5はその活性化が細胞内Ca2+ストアの枯渇に連動しない、高Ca2+透過性の受容体活性化カチオンチャネルであることが明らかになった。本研究により、TRPは細胞内Ca2+ストアの枯渇により活性化される容量性Ca2+流入チャネルであるという定説がくつがえされた。
電位依存性Ca2+チャネルの形質膜への発現移行を調節する、βサブユニットの結合領域をα1サブユニットのI-II linkerに同定した。
我々が他に先駆け新規に発見し、一次構造を決定した電位依存性Ca2+チャネル(BIIと命名、その後α1Eに、さらにさらにCav2.3に統一: Niidome T, et al. FEBS Lett. 308, 7-13 (1992))の機能的同定により、まったく新しい型の電位依存性チャネルを発見した。この後にR型と名付けられた、神経細胞に豊富に発現する本α1ECa2+チャネルは、他の高閾値Ca2+チャネルと違いにNi2+よる阻害に高感受性で、非常に速い不活性化を示すことがわかった。
神経毒ω-コノトキシン-GVIAにより選択的に阻害されるN型電位依存性Ca2+チャネルの一次構造を明らかにし(BIIIと命名、その後α1Bに、さらにCav2.2に統一)、cDNAの機能的発現により、本来のN型の機能的定義である速い不活性化を示すCa2+電流成分だけでなく、従来dihydropyridine感受性L型によると考えられてきた、不活性しない成分もN型は担うことが明らかになった。
電位依存性Ca2+チャネルのα1Aチャネルポア(pore)形成部位において、Ca2+選択フィルターを形成する4つのグルタミン酸残基を同定した。人工的に導入した変異の引き起こすイオン選択性の変化を検討することにより、この各繰返し構造単位の5つ目と6つ目の疎水性領域の間(S5-S6)に存在するグルタミン酸残基が、非等価的に高親和性Ca2+結合に寄与することを示した。
世界に先駆け、脳神経系の電位依存性Ca2+チャネルの一次構造を明らかにし(BIと命名、その後α1Aサブユニットに、さらにCav2.1に統一された)、cDNAの機能的発現等により、それが小脳プルキンエ細胞のCa2+電流を担うP型と呼ばれるCa2+チャネルであることをつきとめた。 P型α1A遺伝子は、脊髄小脳変性症や家族性偏頭痛等、ヒト遺伝性疾患の原因遺伝子であり、現在もますます注目されている。また、副サブユニットβ1によるP型チャネル活性、発現の増強を示し、Ca2+チャネルの生理的機能発現の場の分子構築も明らかにした。